日本デイケア学会

ごあいさつ

理事長就任にあたって

 “入院治療中心から地域生活中心へ”との基本政策が策定され、この基本政策にそって、我が国の精神保健医療福祉政策は策定されています。少子化と高齢化が現実的な課題となる中、共生社会の実現にとって、包括的地域ケアが大きな課題となっております。精神疾患を持つ方が地域で生活を送りながら、医療とリハビリテーションを受ける地域ケアにとって、デイケアは治療とリハビリテーションの要素を持つ医療活動で欠かせないものです。地域での連携をベースにした地域ケアで、多職種によるデイケアは中心的役割を果たすことが出来ます。しかしながら、現状ではデイケアは適切な評価を受けてはいません。

 デイケアに逆風が吹いている中で、Eクリニック問題がマスコミに報じられ、デイケアは大きなイメージダウンを強いられました。生活保護受給の条件として、デイナイトケアへの導入が行われ、生活保護の窓口でその対応にあたったのが、医療機関から派遣された職員であったことが報じられました。

 この問題で、私たちが問われたことは、治療への導入が生活と引き換えに行われ、自由な契約に基づく治療契約といった治療原則からの著しい逸脱があったことであり、デイナイトケアにおいて金銭管理や住居に至るまで医療の管理下に置かれていたということです。

 自由意思に基づかない治療や、治療の名のもとにおける生活管理は、あってはならないことです。私たちに潜むパターナリズムを自己点検しなければなりません。

 さて、デイケア学会では、平成28年の診療報酬改定に際して、専門的プログラムへの加算などいくつかの提案を行ってきましたが、結果は、1年以上の利用者に対する利用制限や3年以上の利用者の減額など厳しいものでした。

 こうした中にあっても、デイケア学会は大阪、金沢、秋田の地で、大会長をはじめ多くの関係者の尽力のもとで、総会と学術研究会を開催しました。学術研究会では多くの成果が発表され、今後のデイケアに有用な知見が得られました。このような優れた知見を多くのデイケア利用者、関係者に届けていくことも学会の大きな責務と考えます。

 今期の重要課題として、Eクリニック問題の反省を踏まえ、デイケアに取り組む倫理綱領の策定が必要と考えています。デイケアにおいて、よりより良いサービスを提供するには、エビデンスに基づいた実践が求められています。それには、デイケアの質の担保が必要で、デイケアの標準化が要になります。現在、各機関と共同でデイケアの大規模調査を実施しており、その成果を標準化に反映します。また学術研究会で得られた知見を各地の実践に反映するには、きめ細かい取り組みが必要です。各地区で行われている研究会と連携し、より身近なところでの連携強化を図り、地域ケアの要として地域の社会資源と結びついたデイケアの実施を推進します。

 皆様のご協力をお願いします。

 
日本デイケア学会 理事長
原 敬造